スクラム開発におけるプロダクトオーナー(PO)の役割8選

スクラム開発 プロダクトオーナー 役割エンジニアコラム

スクラム開発とは

 スクラム開発とは、1990年代にジェフ・サザーランド氏とケン・シュエイバー氏という方達が中心になって作られたもので、Scrumの名前は日本人である野中郁次郎氏と竹内弘高氏によって提唱されたものです。

 アジャイル開発の中の一つの手法であるスクラムを利用することで、定期的なレビューをしながらチームをより強固にすることができます。詳しいスクラム開発の内容については、下記を参照してください。

プロダクトオーナー(PO)の役割とは?

 プロダクトオーナー(PO)はざっくりと言うと、スクラム開発におけるプロダクトの最終意思決定権利を持つ人になります。またプロジェクトは常にゴールがあり、そのゴールに向けてどんな優先順位で進めていくかを判断する役割も併せ持ちます。

 一方、実際にプロダクトの意思決定、優先順位付けってどうしたらいいの?という疑問が湧いてくると思いますので、具体的なプロダクトオーナーが行うべき役割を8選紹介していきたいと思います。

1. プロダクトのビジョンを考え、伝える

 プロダクトオーナーは、プロダクトの最終意思決定者になります。プロダクトオーナーがプロダクトの責任を持っているので、プロダクトに対する気持ちや成し遂げたいビジョンを考える必要があります。

 また、ビジョンを考えるだけでは及第点で、スクラムチームやステークホルダーに言葉で伝える必要があります。しっかりと言葉で伝えない限り、チームはゴールを見失ってしまいますので、何度も何度も伝えることを心がけましょう。

 もちろん、プロジェクトとは上司、顧客、他社など様々なステークホルダーが存在しますので、彼らの要求をヒアリングすることも大切です。ただ大事なことはプロダクトオーナーがプロダクトの最終意思決定者になりますので、常にプロダクトの責任を持っていることを考えてビジョンを立てる必要があります。

2. プロダクトバックログを作る

 続いて、プロダクトオーナーはプロダクトのビジョンに従って、プロダクトバックログを作成する必要があります。厳密にはバックログはスクラムマスターやデベロッパーが作成しても良いのですが、バックログが出来ていることに責任を持つのはプロダクトオーナーなので、率先して作っていくことが必要です。

 プロダクトに対しての熱い気持ちが一番高いのは、プロダクトオーナーですので、そういった意味からも、開発しようとしているものはどんな機能があり、どんな能力があり、どんな良さがあるのかを知っているのはプロダクトオーナーの頭の中にあると思います。ですので、バックログを一番正確に作れるのはプロダクトオーナーということを意識しておきましょう。

3. バックログの優先順位を決める

 バックログが作成できたら、プロダクトオーナーは優先順位を決定する必要があります。これはスクラムマスターもデベロッパーも決めることが出来ません。優先順位を決めることが出来るのはプロダクトオーナのみです。

 優先順位はMVP(Minimum Viable Product)という考え方が用いられ、最低限リリースするために必要な機能・要素は何かを考えることで、自ずと優先順位が決められてくるでしょう。また優先順位は市場のニーズやマーケットの状況によっても変わってきますので、適宜アップデートしていくことが大切です。バックログと同様に一度決めたら終わりということはありえません。

4. リリーススケジュールを決める

 バックログの優先順位が決定したら、リリースのスケジュールを決める必要があります。スクラムチームはスプリントごとに開発物をリリースしますが、これを実際にいつ市場や顧客にリリースするかは、プロダクトオーナーの判断次第となります。

 また、リリーススケジュールをチームに共有しておくことで、個々人の意識もリリースターゲットに向かうため、スケジュールを共有しておくことも必要です。

5. スクラムチームへの社内外からの妨害を防ぐ

 仕事をしていると、様々な雑務や相談などが降ってくることがあると思います。スクラムチームはプロダクトの開発に向けて尽力していますので、プロダクトオーナー(スクラムマスター)が率先して社内外から来る妨害を防いでいくことが必要となります。

 スクラム開発では、ロールによって役割が決められているため、それ以外の仕事に時間を浪費してしまうことはスクラム開発の失敗に繋がります。時にはデベロッパーたちへの連絡手段を全てシャットダウンし、プロダクトオーナーが全ての窓口になるという強硬手段に出ることも必要かもしれません。

 それは、プロダクトオーナーはプロダクトビジョンに従い、プロダクトをリリースすることに責任を持っており、デベロッパーたちはプロダクトを開発することに責任を持っているため、実際に開発しているメンバーへの妨害を防がなければ、それぞれの責任を果たすことができなくなってしまうからです。

6. ステークホルダーとスクラムチーム両方と接する

 スクラム開発の基本方針ではステークホルダーと、スクラムチームにそれぞれ50%ずつの時間を、プロダクトオーナーは接するべきとされています。

 これは、プロダクトオーナーは様々なステークホルダーとコミュニケーションをとり、プロダクトを最大限良いものにしていく責任がある一方で、実際に開発しているメンバーたちに、我々は今何を作るべきで、何を優先するべきなのかを明確に伝える必要があるため、50%ずつが適していると考えられています。

 もちろん、ステークホルダーの人数やスクラムチームの自立度などによって、柔軟に変えていくことは必要だと思いますが、常に両者と適切なコミュニケーションが出来る体制を考えましょう。

7. 開発物をレビューする

 プロダクトオーナーはプロダクトの最終意思決定者になりますので、開発されたものがイメージしているものと合っているか否かを判断する必要があります。イメージと違うのであれば、開発物に対してやり直しをお願いすることも必要です。 

 また、開発物は実際に動くものでプロダクトオーナーが目に見えるものでレビューをしてください。パワーポイントで作られた模造品や口頭説明などを受け入れてはいけません。常に目に見える形で、プロダクトオーナーが、「OK」か「やり直し」かを判断する必要があります。

8. マーケットを理解する

 最後にプロダクトオーナーはマーケット(市場)を理解する必要があります。革新的だと思われるプロダクトでも、大抵の場合は他社の製品と似ている部分はあると思います。自分のチームが作ろうとしているものに対して、他社はどんな事をやっているのか理解した上で、プロダクトの価値を上げていく必要があります。

 また、実際にペルソナと合致するユーザーなどにヒアリングしてみても良いかもしれません。プロダクトの価値を高めるためには、ユーザーのニーズを明確にし、プロダクトが市場で受け入れてもらえるのかを考えていく事が必要です。

プロダクトオーナーの考え方

 これまでプロダクトオーナーの役割として8選紹介させて頂きましたが、プロダクトオーナーは中々骨が折れる仕事です。ビジョンを明確に伝える能力、決断力、判断力、分析力など様々な能力が必要になる役割です。

 日本の一般的なSIerのようなプログラマーからシステムエンジニア、プロジェクトマネージャーのように単にステップアップするような役割ではなく、明確なビジョンを持ち人を動かしていくだけの能力を備えている人がなるべき役割です。(※そもそもスクラム開発に序列はありません。ただのロールです。)

 常にプロダクトオーナーはプロダクトを、どのようにすれば価値を高められるかを考える必要があるため、単にエンジニア能力が高いことや、管理能力が高いというのではなく、開発しようとしているプロダクトに対して強い気持ちがある方がなるのが良いと私自身は思います。

 また、スクラムチームを先導する役割として失敗しないために、下記のアンチパターンなども参考にしてみてください。

まとめ

 プロダクトオーナーは大変な仕事ですが、ぜひこれらを参考にして頑張ってください!
もしスクラム開発をもっと学びたい方がいれば、下記のような書籍を読んでみてください。