AIアプリの基礎を押さえよう!要約・翻訳・QAなど基本応用例とプロンプト設計のコツ

プロンプトエンジニアリング

はじめに

近年、AI(人工知能)は私たちの身近な存在として急速に普及しています。とりわけ、文章の生成や翻訳、要約などを得意とする大規模言語モデル(Large Language Model: LLM)は、様々な業界で活躍するようになりました。これらのモデルは、プロンプトと呼ばれる「AIへの指示文」を上手に設計することで、私たちの期待に沿ったアウトプットを返すことができます。いわゆる「プロンプトエンジニアリング」というテクニックが鍵を握っており、どのようにAIへ指示を与えるかによって、得られる結果の品質が大きく左右されるのです。

本記事では、AIの基本的な応用例について丁寧に解説していきます。さらに、インターネット上の情報を補足しつつ、分かりやすい例を多用して説明しますので、AIに詳しくない方でも十分に理解していただける内容となっているはずです。みなさんがAIと上手に協力し、より高度な成果を得るための一助となれば幸いです。

AIの基本的な応用例とは?

「文章関連タスク」の自動化

大規模言語モデルの代表的な強みは、言語に関わる多様なタスクに適応できるところです。たとえば、

  • 要約:長い文章を短くまとめる
  • 翻訳:英語→日本語、日本語→英語など多言語間での文章変換
  • 校正・文体変換:文章を読みやすく書き換える、敬体・常体を切り替える、など
  • 情報抽出:文章内に含まれる重要なキーワードや数値を抽出する

など、言葉を扱うあらゆるシーンで活躍が期待されます。

Q&A(質問応答)機能

チャットボットとしてよく利用されるのが、AIによる「質問応答機能」です。ユーザーが何か疑問を投げかけると、AIが自分の学習データや設定されたルールに基づいて回答を返します。最近では、ウェブサイトのサポートページや製品マニュアルから情報を検索し、それを踏まえて回答を生成する仕組みも登場し、顧客サポートの効率化に大きく寄与しています。

テキスト生成と創作支援

エッセイやブログ記事の下書き、小説のあらすじ生成、キャッチコピーの作成など、クリエイティブな面でもAIの応用は盛んです。たとえば企業のマーケティング部門では、商品紹介文をAIに書かせたり、SNS投稿の文案を自動生成したりする事例が増えています。アーティストやライターの方には、アイデア出しのパートナーとしてAIが活用されるケースもあります。

プログラミング支援

コードの生成やバグ修正の提案など、開発者の仕事をサポートするツールとしても大規模言語モデルは注目を集めています。GitHub Copilotなどがその代表例で、IDE(統合開発環境)上でAIがリアルタイムにコード補完を提案してくれるため、生産性が向上するというメリットがあります。

AIによる要約アプリケーション

要約機能の仕組み

文章要約には、主に2つのアプローチがあります。

  1. 抽出的要約(Extractive Summarization):元の文章から主要なフレーズ・文をそのまま抜き出す
  2. 生成的要約(Abstractive Summarization):元の文章の内容を理解し、新しい言い回しでまとめ直す

大規模言語モデルを用いた要約は後者(生成的要約)が得意で、短くわかりやすい文章を作り出せるのが特徴です。

プロンプトの書き方の例

たとえば、ある長いニュース記事を要約したい場合、以下のようなプロンプトを用意すると効果的です。

「以下のニュース記事を日本語で300文字程度に要約してください。
  - 専門用語はできるだけ平易な言い回しに変えてください。
  - 記事の重要なキーワードは必ず含めてください。
  - 最後に簡単な結論を1文つけてください。

[ニュース記事本文]
(ここに記事の全文が入る)

ポイントは、**「どの程度の長さで」「どのような文体で」「どんな情報を必ず入れてほしいか」**を明示的に書くことです。これにより、AIが要約のゴールを明確に認識できます。

応用例:複数記事の一括要約

「同じテーマに関する複数のニュース記事をまとめて要約したい」というニーズもあるでしょう。以下のように、記事ごとに箇条書きで情報整理を要求した上で、最後に統合的なまとめを求めるプロンプトを設計できます。

「以下に3本の記事があります。それぞれの要旨を100文字以内でまとめ、最後に3本の記事の共通点と相違点を整理した総合的な要約を200文字で書いてください。

[記事1]

[記事2]

[記事3]

AIによる翻訳アプリケーション

一般的な翻訳への使い方

大規模言語モデルは、すでに膨大な多言語データを学習していることが多いため、英日・日英などの翻訳も得意です。通常の翻訳サービスとの差別化として、**「文体の指定」「専門用語の優先度」**などを細かくプロンプトに書けるのが強みです。

プロンプト例:文体と目的を明示
「以下の英文を、ビジネスメールとして日本語に翻訳してください。語尾は「〜です・〜ます調」で統一し、専門用語はカタカナを使わずに訳してみてください。

[英文]
(英文本文)

同時に要約も行う場合

翻訳と同時に要約を頼みたいケースも考えられます。たとえば「翻訳文を作成しつつ、100文字以内でポイントを箇条書きにしてほしい」と依頼すれば、1度の処理で英日翻訳+要約が得られるため効率的です。

質問応答(Q&A)アプリケーション

シンプルなQA

AIに「○○とは何ですか?」と尋ねると、定義や特徴などを答えてくれます。ウィキペディアのような構造化データを参照する場合や、大規模なテキストコーパスから情報を検索して答える場合もあり、カスタマーサポートや教育用チャットボットとしての利用価値は大きいです。

プロンプト例:限定的な検索
「以下の文章を参照して、質問に答えてください。わからない場合は「不明」と答えてください。

[文章]
…(テキスト)…

Q: この文章によると、△△の定義は何ですか?

ヒント: わざと「不明」と答えるよう指示することで、AIが根拠のない推測をしにくくする効果が期待できます。

カスタマイズ事例:FAQチャットボット

企業のFAQページから回答を生成する場合、FAQの文章をあらかじめAIが使える形で与え、ユーザーが投げかけた質問に対しFAQから関連する内容を抜き出して回答する設計が考えられます。複数のプロンプトを組み合わせる(Dual-Prompt Approachなど) ことで、①FAQの要点整理 → ②質問とのマッチング → ③回答生成という段階的処理が可能になります。

文章生成と創作支援アプリケーション

ブログ記事や広告コピーの作成

先述したように、AIは文章生成も得意です。たとえばブログ記事の冒頭部分を「SEOキーワードを3つ織り交ぜて、約200文字で書いてください」と指定したり、広告用の短いキャッチコピーを複数パターン生成してもらうことも可能です。

プロンプト例:広告コピー
「新商品のスマートウォッチについて、10文字以内のキャッチコピーを3つ考えてください。若い女性層に響くようなワードを選んでください。」

小説のあらすじ作成

物語のプロットやキャラクター設定にAIを活用するケースも増えています。**「Chain of Thought + Few-Shot Prompting」**などの複合技を使えば、論理展開の整合性をチェックしつつ魅力的なあらすじを作ることが可能です。

プログラミング支援アプリケーション

コード生成

AIがプログラムコードの一部を自動生成し、開発者の手間を省く事例が増えています。特定の言語(Python、JavaScriptなど)を指定し、**「こういう入力を受け取って、こういう処理をし、こういう出力を返すコードを書いて」**と指示すれば、短いスクリプトを生成してくれます。

プロンプト例:Pythonスクリプト
「以下の要件を満たすPythonスクリプトを書いてください。
- Webからデータを取得(requestsを使用)
- 取得したHTMLをパースして、タイトルだけをprintする
- 例外処理を入れて、失敗時はエラーメッセージを表示
必要であればコメントも入れてください。」

デバッグとリファクタリング

既存のコードを入力し、「問題点を見つけて修正してほしい」と依頼することも可能です。リファクタリング(コードの可読性や保守性を高める)においても、変数名や関数名の変更提案、冗長な処理の削減提案などをしてくれます。

これからの展望

AIへの依存度の高まり

文章生成や要約、QAだけでなく、画像生成や音声認識といった別領域との融合も進むと考えられます。AIがさらに高度なマルチモーダル分析を行えるようになれば、テキストと画像をまとめて処理したり、音声で指示してテキストに落とし込むなど、応用範囲はますます広がるでしょう。

プロンプトエンジニアリングの高度化

「どのようにプロンプトを設計するか」がAI活用の成否を大きく左右するため、今後はプロンプトエンジニアやプロンプトデザイナーといった専門職の需要が高まると予測されます。既に海外では多くの企業が「AI Prompt Engineer」というポジションを募集し始めています。

エラーやバイアスへの対策

大規模言語モデルは多くの情報を扱える反面、誤情報(ハルシネーション)やバイアスのリスクがつきものです。これを制御・軽減するために、

  • ユーザーが途中経過をチェックする
  • 外部情報とクロスチェックする
  • 誤りがあったらフィードバックを与えてAIに再学習させる
    といった取り組みが不可欠です。

まとめ

大規模言語モデルを使ったアプリケーションの基礎として、要約・翻訳・質問応答・文章生成・プログラミング支援など、多彩なジャンルでAIが活躍していることをご紹介しました。プロンプトエンジニアリングを上手に活用すれば、AIが提供できる価値はさらに高まります。

  • 文章関連タスク:要約や翻訳、文章校正など
  • 質問応答(Q&A):チャットボット、FAQシステム
  • 文章生成と創作支援:広告コピー、ブログ記事、物語のあらすじ作成
  • プログラミング支援:コード生成、バグ修正、リファクタリング

今後もAI技術の進歩が続き、プロンプトエンジニアリングがより複雑で高度なタスクにも対応できるようになるでしょう。みなさんも、まずは簡単な要約や翻訳など身近なところから試してみて、「自分なりにプロンプトをカスタマイズしてみる」「複数のテクニックを組み合わせてみる」など、創意工夫をしてみてください。AIとの協業が当たり前になる未来はもうすぐそこです。

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