Venom Blockchainを解説!規制準拠・超高速・マルチチェーン対応のWeb3インフラと開発手順

ブロックチェーン

はじめに

近年、レイヤー 1 ブロックチェーンは「スケーラビリティ」「規制対応」「開発者体験」の三つ巴で競争が激化しています。イーサリアムはスマートコントラクトを世に広めたものの、ガス高騰やトランザクション遅延が常態化し、金融機関や政府機関が求めるコンプライアンス要件を満たすにはまだ課題が残ります。そこで登場したのが Venom Blockchain です。

Venom はアブダビ金融自由区 (ADGM) でレイヤー 1 として初の規制認可を取得したチェーンで、動的シャーディングPoS+BFT 合意 により理論上ほぼ無限にスケールします。また、TVM(TON Virtual Machine) を基盤に複数言語でのスマートコントラクト開発を可能にし、今後は EVM 互換レイヤーも提供予定です。さらに「パブリック+プライベート」のハイブリッド設計により、CBDC や国際決済など“現実世界”のユースケースを強く意識している点が特徴です。本記事では Venom の技術アーキテクチャ、開発フロー、ユースケース、トークン経済、ロードマップを 詳しく解説します。

Venom が目指すもの

規制対応を前提とした設計

多くのパブリックチェーンは「Permissionless」を掲げつつも、法規制と衝突しやすいというジレンマを抱えています。Venom は ADGM のデジタル資産フレームワーク に準拠し、KYC/AML モジュール をチェーンレベルで実装しました。アカウントごとに「認証済み」「制限付き」「匿名」などのステータスを付与でき、スマートコントラクトは実行時にコンプライアンスチェックを行えます。これにより銀行や中央銀行でも利用可能なレベルの規制遵守が実現します。

ユニバーサル・ブロックチェーン構想

Venom は「一つのプラットフォームで多様なニーズを満たす」ことを掲げ、パブリックチェーンとしてのオープン性と、プライベートチェーン並みのカスタマイズ性を両立させています。企業や政府は独自の Workchain を立ち上げ、独自ガスモデルや VM を設定可能。公共チェーンのセキュリティを享受しつつ、ニッチな要件に合わせたルールを運用できます。

技術アーキテクチャの詳細

1. 動的シャーディング

従来の固定シャーディングはシャード数が不足するとボトルネックになります。Venom の Dynamic Sharding はネットワーク負荷を監視し、しきい値を超えると Shardchain を自動増設。逆に負荷が下がればシャードを統合し、リソースを節約します。これにより TPS は需要に応じて線形に伸び、理論値で 10 万 TPS 超を目指しています。

2. PoS+BFT 合意

バリデータは VENOM をステークし、ラウンドロビンでブロック提案。次に BFT 投票フェーズで 2/3 以上の署名が揃えば 1–2 秒でブロックが確定します。フォークが発生しにくく、最終性が速いため金融決済に適しています。

3. TVM と多言語サポート

Venom は TON 系列の TVM を採用し、

  • FunC: TVM ネイティブの関数型言語
  • Solidity: EVM ライクな言語。EVM 互換レイヤーで動作予定
  • C++/Rust: 高速ネイティブコードを呼び出す FFI を提供します。開発者はパフォーマンス重視なら FunC/C++、既存 DApp 移植なら Solidity を選択できます。

開発者体験を掘り下げる

CLI と SDK

npm i -g venom-dev           # CLI インストール
venom-dev init counter-func  # テンプレート生成
cd counter-func

counter.fc を編集したら、

venom-dev compile counter.fc
venom-dev deploy counter.tvc --value 10

わずか数コマンドでテストネットにデプロイ可能。今後 Hardhat プラグインがリリースされれば、Solidity 開発者は npx hardhat run でそのまま Venom をターゲットにできます。

アカウント抽象化とガスレス UX

Venom Wallet は Account Abstraction を実装しており、

  • ガス代を第三者がスポンサー
  • ソーシャルリカバリーで秘密鍵紛失を救済
  • マルチシグ+ハードウェア署名を標準化
    といった高度な UX をネイティブでサポートします。

ユースケースをさらに具体化

1. 中央銀行デジタル通貨 (CBDC)

UAE や GCC 諸国ではクロスボーダー決済コスト削減が急務です。Venom の Workchain に政府専用チェーンを作り、

  1. 法定通貨を 1:1 でトークン化
  2. 銀行 KYC アカウントのみ転送可能
  3. 決済完了後にリアルタイムで FX 清算
    というフローを実証中と報じられています。

2. 規制対応 DeFi

DEX「VenomSwap」では、匿名ユーザーは 1 日取引上限が設けられ、KYC 済みアカウントは上限なしという コンプライアンス階層 がスマートコントラクトで自動適用されます。これにより機関投資家も参入しやすい環境を構築しています。

3. GameFi のマスアダプション

  • シャード毎にワールド分割 → 同時接続 100 万人規模でも遅延 1 秒以下
  • NFT ロイヤリティ を DAO 投票で動的変更
  • ガスレス取引 でカジュアルユーザーをオンボード

VENOM トークン経済を深堀り

指標数値解説
初期供給7.2 Bうち 25 % が財団ロック、10 % がエコシステム報奨
ステーキング最小額10 k VENOM誰でもライトノードを立て委任ステーク可
手数料バーン率50 %ネットワーク利用が増えるほど供給圧縮
インフレ上限1 %/年ステーキング報酬で調整、実質デフレを狙う

他チェーンとの比較で見える強み

チェーン規制準拠シャーディングファイナリティガスコスト対象市場
Venom◎ (ADGM)動的1–2 秒金融・政府
Ethereum×12 分汎用
Polygon×2 秒消費者DApp
Solana×<1 秒DeFi/ゲーム

今後のロードマップ詳細

  1. 2024 Q3
    • EVM 互換レイヤー β公開
    • Venom DEX V1 ローンチ(KYC レイヤー組込)
  2. 2024 Q4
    • CBDC Pilot Workchain を GCC 2 か国でテスト運用
    • ZK‑KYC SDK リリース(個人情報を秘匿したままコンプライアンス証明)
  3. 2025 H1
    • クロスチェーンブリッジ(Polkadot IBC・Cosmos IBC)
    • Workchain as‑a‑Service ポータル公開(企業向けクリックデプロイ)

開発を始めるためのチェックリスト

ステップ目的参考コマンド
1Wallet インストールhttps://venom.network/wallet
2テストトークン取得Faucet ボタンをクリック
3CLI セットアップnpm i -g venom-dev
4テンプレ生成venom-dev init mytoken
5コントラクト実装vim token.fc
6コンパイルvenom-dev compile token.fc
7デプロイvenom-dev deploy token.tvc --value 20
8ブロックエクスプローラ確認explorer.venom.network

課題とリスク

  1. エコシステム形成
    新興チェーンゆえに DApp 数・TVL はまだ少ない。財団は 10 億 USD 規模のファンドで開発者誘致を進行中。
  2. 複雑なシャーディング
    動的シャードは運用オーバーヘッドが高く、バリデータソフトの最適化が必須。
  3. 規制と分散性のバランス
    KYC/AML を強制し過ぎるとパーミッションレスの精神が損なわれる可能性。

まとめ

Venom Blockchain は 規制準拠超高速スケーラビリティ を両立させた稀有なレイヤー 1 です。

  • ADGM 承認で金融機関・政府案件に適合
  • 動的シャーディング + PoS+BFT で理論 10 万 TPS を目指す
  • TVM & マルチ言語により FunC/C++ から Solidity まで幅広く対応予定
  • Workchain で用途別チェーンをワンクリック構築

DeFi・GameFi はもちろん、CBDC や国際決済のインフラとしても期待が高まる Venom。まずはテストネットで Wallet と CLI をセットアップし、FunC で “Hello Venom” コントラクトをデプロイしてみましょう。次世代 Web3 インフラの可能性を体感できるはずです。

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