DXとは何か
DXの定義
経産省のDXレポートによると、下記と記述されています。
企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を索引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビックデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること
Japan IT Market 2018 Top 10 Predictions: デジタルネイティブ企業への変革 – DXエコノミーにおいてイノベーションを飛躍的に拡大せよ, IDC Japan プレスリリース 2017年12月14日
要約すると、新しい技術を使ってネットとリアルを繋げていこうよ!という話ですね。
実際にDXに取り組んでいる会社はいくつもあり、事業のDXに達成している企業が、事業拡大やコスト削減を達成したり、市場でも優位性を持っていることが多いです。
DXの流れ
現在日本でもDXが進んできてはいますが、IPAの調査によると、2016年から2018年にかけて、DXに取り組まないことによる影響が出ていると回答した企業は、0%から15.8%まで高まっています。実際に2020年4月に起こったコロナウイルスで影響が出たという方もかなり多いのではないでしょうか。
昨今多くの企業ではコロナ下におけるリモートワークが推し進められ、出社をしない方も増えてきたというデータもある一方で、中小企業や一部の大企業では未だに通勤電車に満員で乗っているような状態もあり、DXによる格差が増々高まっている状態です。
一方海外のテレワーク普及率をを見てみると、テレワーク総合ポータルサイトによると、2019年時点でアメリカは85%、英国では38.2%と、日本の19.1%とかなり差が付けられている状態です。もちろんコロナ下では東京で45%程度のテレワーク率だったそうですが、まだまだDXへの取り組みは完全ではないと言えます。
DXの捉え方
DXは単に、日々の業務をIT化すれば良い、というわけではなく経営課題として捉える必要があります。例えば「FAXを使っていたが、全てメールに切り替えた」というのは単なるIT化であり、DXではありません。
DXは「内部のエコシステム」を変革することにあるので、自社ビジネスを抜本から見直し、デジタル化をしなければなりません。例えばコールセンターがあるような企業では、通常だと何十分も電話を待たされるようなケースがあると思いますが、これらを「AI音声」、「チャットボット」、「FAQ検索システムの刷新」など次世代の技術を用いて、コスト削減をしつつ、よりユーザービリティの高いサービスに変えていくことがDXとなります。
そのため、DXは開発部署の単なる業務ではなく、経営と結びついた経営課題として、経営者が捉えなければDXを推進することは困難を極めます。
DX推進における現状の課題
既存システムの課題
DXを推進する時に最も課題としてあげられるのが、現状システムの課題です。いわゆるレガシーシステムがDX化を妨げる要因になることが多く、例えば「ドキュメントが全く整備されていない」、「レガシーシステムとデータ連携が困難」、「影響が大きすぎて、試験に時間がかかる」など、実際の現場ではDX化に伴いシステムを刷新しようとすると、上記のような課題が生じてしまいます。
また、調査によると IT関連費用のうち、8割以上が既存システムの運用・保守に当てられているとされています。最近で想像しやすいのは、みずほ銀行のシステムでしょうか。総開発費4000億という莫大な金額を使って開発したものですが、未だにバグや障害が起き、それを守るためのIT人材がたくさんいることが想像できると思います。
その他にも各企業で開発した独自のシステムが、永遠と保守・運用されているという状態で、このシステムを刷新できなければDX化が難しいとなると、DXを始めるためのハードルになっているのでしょう。
ユーザー企業の課題
続いて、ユーザー企業側の課題です。まず最も重要な点が経営者自身が、DXに対して積極的な心構えを持つことが必要です。前項でも説明しましたが、DX化は経営課題そのものなので、1つの情報システム部門がどうこうする問題ではなく、組織全体の問題です。
また実際に現場のシステムを刷新したり、組織を横断的に改革していく必要があるので、情報システム部門だけでなく事業部門とも積極的にコミュニケーションを取らなければならないため、プロジェクトオーナーがリーダーシップを持って勧めていくことが大切です。
一方ユーザー企業の最も大きな課題として、IT人材不足があげられます。従来の開発はユーザー企業がベンダー企業に対して、システム開発を丸投げするような形で行われていることが多いため、システム開発を理解するユーザー企業の担当者が不足しているという状況です。
エンジニアの比率を見てみると、米国では5:5の割合で技術者がユーザー企業とベンダー企業に分かれているのに対し、現状日本では3:7の割合で、多くの技術者はベンダー企業にいるとされています。
そのためユーザー企業ではITエンジニアの育成・確保が急務となっています。
ユーザー企業とベンダー企業の関係の課題
前項でも説明したように、従来はユーザー企業が要件定義からベンダーに丸投げすることも少なくありませんでした。また、請負開発で行われることが多いため、自分たちで作るシステムをベンダーに決めてもらい、作ってもらったものをただ使っているという状態になっています。
この状態を変えるために、アジャイル開発という手法が近年用いられていますが、そこで課題となるのが責任関係です。アジャイル開発の場合、開発期間中にエンドーユーザーのニーズに合わせて機能を変えていく手法を取るため、成果物が決められておらず準委任契約が一般的です。そのためユーザー企業自身が現行の仕様に対しての理解不足やITスキルの低さに伴う、ベンダーとの認識齟齬が生まれてしまっています。
また、情報システム部門と事業部門、経営企画部門との十分な連携が行われず、必要とされる要件が明確化出来ていない状態で、開発を始めてしまい、結果的にユーザー企業が意図していないものをベンダー企業が作り上げてしまうといった課題があります。
DX推進をするには何をしていくべきか
組織的な経営課題として認識
まず最も重要な点として既に何度か述べさせていただきましたが、DX化をしないことによるリスクを認識すべきです。DX化をしないことで競争力の低下、コスト圧迫、サービスレベルの低下など様々な点で脅威があることを組織的に認識することが必要です。
DX専門組織の設置
続いてDXを推進していくために、現状の情報システム部門は既存システムの運用・保守が続くため、DX化と並行すると上手く行かないケースが多いため、DX専門の部門や組織を設置すべきです。コミュニケーションコストは増えますが、専門的にDX化を推進していくことで、DX化の課題に対して積極的に取り組んでいけるはずです。
DX人材の育成
最後にDX人材の育成です。ユーザー企業のITスキル不足を挙げましたが、実際にDX化を行っていくときは、様々な職種を用意することが推奨されており、プロデューサー、ビジネスデザイナー、アーキテクト、データサイエンティスト/AIエンジニア、UXデザイナー、エンジニア/プログラマなど、DXを進める上での段階でそれぞれが活躍できる職位を用意します。
その上で、開発フェーズに従って、既存システムと業務フローを見直しながら、各位がDX化に対して取り組む必要があります。
また、IT教育における投資も必要で、人材が不足している以上、外部から雇用するだけでなく既存業務を理解しているようなプロパー社員も積極的に育成していくことで、DX化の成功確率がより高まるでしょう。
まとめ
本記事ではDX(デジタルトランスフォーメーション)とは何かについてから、現状抱えているDX化における課題、DXを推進していくときには何をしていくべきなのかを説明しました。
時代の潮流が変わっていくに伴い、企業や個人が変化を受け入れて行かなければならない時代ですので、ぜひDX化について理解しておきましょう。