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Moonbeamが切り開くクロスチェーン時代──ユースケース・技術解説・開発手順まとめ

はじめに

ブロックチェーンは“鎖”という言葉どおり本来は独立したネットワークとして設計されています。しかし2024年以降、ユーザーはイーサリアム・BSC・Solana・Polkadotなど複数チェーンを同時に利用するのが当たり前となり、「チェーンの壁」はUXの大きな障害になっています。MoonbeamはPolkadot上でEVM互換を保ちながら、クロスチェーン接続をネイティブ機能として提供し、マルチチェーン時代のハブ的存在を狙うレイヤー1です。
公式のユースケースページによると、MoonbeamはCross‑Chain Connectivity・DeFi・Gaming・Real‑World Assets(RWA)・Emerging Marketsの5分野に注力し、多数の実運用例が誕生しています。この記事では各ユースケースを深堀りしつつ、開発者がMoonbeam上で“チェーン横断DApp”を構築する方法を解説します。

Moonbeamの特徴とアーキテクチャ

完全EVM互換とPolkadotリレーセキュリティ

MoonbeamはSubstrateで構築されたパラチェーンでありながら、Solidityバイトコードをそのまま実行できます。イーサリアムで慣れ親しんだHardhat/Truffleツールを変更なく使えるため、開発者の学習コストは最小限です。また最終的なセキュリティはPolkadotリレーチェーンが担保し、スロットリース方式で資金をロックする必要がない点もプロジェクトに好まれています。

クロスチェーン・メッセージングの集約ハブ

MoonbeamはAxelar・Wormhole・LayerZero・Hyperlane・XCM・Glacisなど主要ブリッジ/GMP(General Message Passing)を公式にサポートし、統合的APIを提供しています。これによりアプリ側からは「Moonbeamで送受信すれば他チェーンへ伝播」という単一フローで実装できるのが大きな利点です。 

ユースケース1:クロスチェーン接続アプリ

仕組み

“Connected Contracts”とは、ムーンビーム上のコントラクトが裏側で他チェーンの資産や状態を読み書きし、ユーザーには単一UIとして見せる仕組みです。Axelar/LayerZeroのGMPを使い、メッセージとトークンを同時ルーティングできます。

具体例

プロジェクト概要他チェーン連携
Prime Protocolクロスチェーン貸借ETH/BSC/Polygon 資産をMoonbeamで担保参照
Beamswap WarpDEX+カスタムブリッジArb, OP, BSC へ即時USDC転送
Polynomial ConnectオプションAMMETHの建玉とDOTの清算を一括管理

コードサンプル(LayerZero)

// LZEndpoint on Moonbeam
ILayerZeroEndpoint endpoint = 
   ILayerZeroEndpoint(0x000...);

// 他チェーンへメッセージ送信
function xTransfer(address to, uint256 amount, uint16 dstChainId) external {
    bytes memory payload = abi.encode(to, amount);
    endpoint.send{value:msg.value}(
        dstChainId,
        abi.encodePacked(dstApp), // 宛先
        payload,
        payable(msg.sender),
        address(0x0),
        bytes("")                 // adapter params
    );
}

LayerZeroのおかげで送り先はチェーンIDだけ指定すればよく、ブリッジロジックを個別実装する必要がありません。

ユースケース2:DeFiハブ

Moonbeamは早期からDEX・レンディング・リキッドステーキングを揃え、TVLは22年比で約3倍に伸長しました。 

分類代表DApp特徴
DEXStellaSwapクロスチェーンスワップAPI、dBridge統合でETH↔DOT即時交換
レンディングMoonwellネイティブGLMR担保+USDC借入、Etherscan互換UI
LSDBeamStakestDOTとstGLMRを発行し、RWA担保プロトコルと接続

流入元はPolkadotエコシステムだけでなく、EVMチェーン→Axelar→Moonbeamというルートも増えており、ガス代がイーサより廉価な点も採用理由になっています。

ユースケース3:ゲーム & メタバース

Moonbeam Nova(テストネット)上ではUnity SDKが公開され、スマートコントラクトを意識しないゲーム資産発行が可能になりました。具体例として、MoonSamaはポリゴンカードNFTをLayerZero経由でインポートし、ゲーム内アバターに転用する機能を実装しています。アイテム転送は数秒で完了し、プレイヤーは“チェーンを越えたインベントリ”を体感できます。

ユースケース4:Real‑World Assets(RWA)

公式ケーススタディにはCarbifyというカーボンクレジットNFTや、富裕層向け投資商品をトークン化したColb Financeが掲載されています。これらはMoonbeam上でERC‑3643準拠の譲渡制限トークンを発行し、KYC済ウォレットのみ売買可能とすることで規制要求をクリアしています。

ユースケース5:新興国市場

ブラジル・ナイジェリアなど銀行口座普及率が低い地域では、USDCブリッジ+携帯SMS認証ウォレットの組み合わせが導入されつつあります。MoonbeamはPolkadot共同リレーチェーンを介しローカルステーブルコインをトークン化、クロスボーダー送金の手数料を1/50に削減しました。現地のフィンテックがOrbitチェーンを採用しガスを自社トークン建てにする事例も出ています。

Orbitで独自パラチェーンを構築する手順(概要)

  1. Moonbeam FoundationへOrbitスロット申請
  2. cargo contract new mychain でSubstrateテンプレ生成
  3. Moonbeam SDKでEVMパレット/XCMパレットを追加
  4. クロスチェーンメッセージングにAxelarかLayerZeroを選択し、Relayerキーを設定
  5. スロット接続後、独自ガス通貨を登録(例:GAME)
  6. MetaMaskでchainId: 1284xxを追加しβテスターをオンボード

開発と運用コストは通常パラチェーンの1/10以下とされ、ゲームスタジオやRWA企業がPoCを進めています。

トークン経済とガバナンス

指標値(2025/04時点)
ネイティブGLMR(Moonbeam) / MOVR(Moonriver)
総供給1 B GLMR(インフレ年5%)
ステーキング年率 10〜14%(バリデータ数 120)
ガバナンスOpenGov に移行、XCM手数料やCore時間割当をオンチェーン投票

クロスチェーン手数料(XCM・Axelarガス)の支払いにはGLMRが使われるため、ネットワーク利用が増えるほど需要が高まる設計です。

最新ロードマップ(2025上期)

Moonbeamで開発を始める3ステップ

  1. 環境構築
npm i -g hardhat
npm i @moonbeam-network/hardhat-moonbeam
  1. ネットワーク設定hardhat.config.js
networks: {
  moonbeam: {
    url: "https://rpc.api.moonbeam.network",
    chainId: 1284,
    accounts: [process.env.PRIVATE_KEY]
  }
}
  1. Axelar送金を統合
npm i @axelar-network/axelarjs-sdk

まとめ

Moonbeamは「クロスチェーン接続を前提にしたEVMチェーン」という独自ポジションで、DeFi・ゲーム・RWAなど多彩なユースケースを加速度的に拡大しています。AxelarやLayerZeroを統合することで、開発者は複数チェーン上の資産とロジックを1つのDAppにまとめられ、ユーザーはブリッジを意識せずシームレスにWeb3を利用できます。
今後Orbitチェーンやzk‑XCMが本格化すれば、MoonbeamはPolkadotのみならずEthereum・Cosmosを横断する“クロスチェーンハブ”の中心となるでしょう。Web3のユーザー体験を一変させる可能性を秘めたMoonbeamを、ぜひこの機会に触ってみてください。

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